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はじめに
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(obstructive sleep apnea syndrome,OSAS)はアメリカ睡眠医学会(American Academy of Sleep Medicine,AASM)の睡眠呼吸障害(sleep disordered breathing,SDB)分類1)では,①閉塞性睡眠時無呼吸低呼吸症候群(obstructive sleep apnea hypopnea syndrome,OSAHS)と同義語であるが,その他として,②中枢性睡眠時無呼吸低呼吸症候群(cen-tral sleep apnea hypopnea syndrome,CSAHS),③チェーンストークス呼吸症候群(Cheyne-Stokes breathing syndrome,CSBS),④睡眠低換気症候群(sleep hypoventilation syndrome,SHVS)がある.
OSAHSでは閉塞型無呼吸,閉塞型低呼吸,混合型無呼吸,呼吸努力関連覚醒反応(respiratory effort-related arousal,RERA)イベント,CSAHSでは中枢性無呼吸,中枢性低呼吸,CSBSではチェーンストークス呼吸,そしてSHVSでは低換気が主たる呼吸イベントである.呼吸イベントを正しく判別しなくては診断を誤ってしまうことから,この解析は重要な業務である.また,複数の病因が存在し病態が混在することもあり,主たる呼吸障害が何であるか判断することも大切である.
臨床現場で慢性心不全患者に多いのはOSAHSとCSBSの混在である.閉塞型無呼吸は心不全に至る原因として,また,チェーンストークス呼吸は心不全の帰結として生じていると考えられるが,心不全の病状,年齢,基礎疾患,治療などにより閉塞型無呼吸とチェーンストークス呼吸の発生の優位性が変化する.どちらに優位性があるかを判別することは,治療法の選択に影響を与えるためその責務は重い.閉塞型無呼吸とチェーンストークス呼吸の鑑別は,混在病態が複雑であり,技術が不十分な面もあるため難しく,臨床検査技師の技量が問われる場面でもある.
わが国ではOSAS診断のために簡易検査と終夜睡眠ポリグラフ検査(polysomnography,PSG)が保険適用されている.簡易検査は測定項目が少なく,取り扱いが簡便でかつ安価のため使用施設が多い.一方,PSGはゴールデンスタンダードな検査であるものの,その施行や解析の技術習得に時間を要すること,臨床検査技師の勤務体制の整備が必要なこと,機器が高価であることから,いまだ十分な検査ベッド数に達していない.本稿では,OSAS診断用としての簡易検査とPSGの施行法,解析法について述べる.
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