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はじめに
慢性呼吸器疾患では経過中に体重減少がみられ,やせ型の体型が高率に認められることは以前から認識されていた.しかし,疾患による避けがたい終末像として理解されていたため,実態は必ずしも明らかにはされていなかった.米国NIHによる大規模な疫学調査1)や厚生省(現厚生労働省)呼吸不全研究班の全国調査2)で,慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)では体重が肺機能とは独立した予後因子であることが示され,呼吸器疾患における栄養障害の臨床的重要性が再認識された.
わが国では慢性呼吸不全を呈する主要な基礎疾患としてCOPD,肺結核後遺症,間質性肺炎が挙げられる.これら3疾患のなかで特にCOPDは患者数も多く,高率かつ特徴的な栄養障害が認められることから,主にCOPD患者を対象として呼吸器疾患と栄養障害との関連についての研究が進められた.COPDでは栄養障害と病態との密接な関連が明らかになり,予後との関連もさらに検証がすすめられた.その結果,body mass index(BMI)が肺機能とは独立した予後因子であることは,Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease(GOLD)のワークショップレポート3)や日本呼吸器学会のCOPD診断と治療のためのガイドライン(第2版)4)においてエビデンスAとして記載されるに至った.
近年,COPDの全身への影響,いわゆる“systemic effects”が注目されており,全身性疾患としての病態評価が重視されてきている(表1)5).栄養障害は重要な“systemic effect”の一つとして位置づけられているが,その原因は完全には解明されておらず,栄養治療の有効性に関するエビデンスも未だ確立されていない.
本稿では,systemic effectに包含される栄養障害,全身性炎症,骨格筋機能障害の相互の関連について述べるとともに,栄養治療の実情と展望,栄養障害との関連が注目されている摂食調節因子についても言及したい.
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