今月の主題 炎症性肺疾患へのアプローチ
診断のポイントと治療
その他の肺疾患
慢性閉塞性肺疾患
山内 俊忠
pp.294-298
発行日 1988年2月10日
Published Date 1988/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402221543
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30年ほど前には,アメリカの"肺気腫"がイギリスでは"慢性気管支炎"として扱われていた時代があった.それはそれぞれの国での定義の違いや臨床家の癖によるものと思われるが,このため食い違いを改めるべく両国を含めての会議が持たれた(第1回Aspen Conference,1958年).その後も討議が続けられ,臨床的に"換気に伴って呼気の気流が妨げられる障害"を,chronic non-specific lung diseaseあるいはchronic obstructive lung diseaseと呼ぶようになった.
1965年のAmerican Thoracic Society(ATS)において,"肺胞壁の破壊・消失や気道の炎症による慢性の呼気障害をもたらす臨床像を持つ疾患群"を慢性閉塞性肺疾患(COPD)としてまとめる概念が提唱された.しかし,"慢性気管支炎"は,結核や腫瘍を除く気道病変が原因で慢性的に咳と痰があるものであり,"肺気腫"は,病理学的に肺実質に肺胞壁の破壊と肺胞腔の拡大を来すもの,とのはっきりとした違いがあり,今日では臨床的,病理学的診断の向上により,もはや症候群としてのCOPDの名称は意味がないとする声もあるが,上記の疾患のいくつかの合併例や,臨床観察のみでは明確な分類の不可能な症例も多く,臨床像と病理組織像との関連性が明確になるまでの仮称としての用語と理解すべきと考えられる.
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