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薬剤の副作用の克服は最も重要な課題であり,それぞれの患者の病態を正確に捉えて副作用のない有効な治療法(薬)〔Personalized Medicines:個人個人に合った医療(オーダーメイド医療)〕は,近未来医療として注目されている.例えば,非小細胞肺癌の治療薬として承認されたイレッサは非小細胞肺癌に発現するEGFレセプターチロシンキナーゼというタンパク質をターゲットとした分子標的治療薬で,癌の細胞を標的にするため,癌以外の細胞(正常な細胞)を傷害することなく,患者の30%で効果を認める薬として脚光を浴びた.しかし,服用患者の5.8%で肺線維症・間質性肺炎という重篤な副作用が出ることが報告され深刻な問題が浮き彫りにされた.
そのような問題を克服し,副作用なく,有効的な治療薬をヒトに投与可能にする目的で,現在使用されている数多くの薬剤の薬効・副作用発現に関連する遺伝子および病気の発症に関する遺伝子を探索する国家プロジェクト(文科省)「オーダーメイド医療の実現化プロジェクト」が東京大学医科学研究所教授・ヒトゲノム解析センター長である中村祐輔先生(プロジェクトリーダー)の下で2003年に始動された.この事業は,東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター,理化学研究所遺伝子多型研究センターの2研究機関と岩手医科大学,財団法人癌研究会,大阪府立成人病センター,東京都立老人医療センター,日本大学,順天堂大学,日本医科大学,医療法人徳洲会の8施設が協力機関として参加している.ヒトのゲノム(全遺伝情報)には,約30億の暗号文字が並んでおり,このうち99.9%は誰でも同じであるが,0.1%に違いがあるといわれている.この違いにより,薬が効くか効かないか,副作用が出るか出ないかなどの個人差が生じるため,このような遺伝情報の個人差を把握して,患者にあった薬や治療法を確立するための重要なプロジェクトである.
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