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はじめに
薬剤治療不応の重症心不全患者の根本的な治療は心臓移植以外にない.しかし,ドナー不足は深刻であることは周知のことである.脳死患者からの生体心移植に代わる方法として,心筋移植療法のヒトへの応用が期待されている.しかし,現状では心筋を再生して移植する技術,あるいは幹細胞を移植しホスト心臓内で心筋へ形質転換する治療は未だ行われていないといったほうがよいだろう.そのため本題名のように,未だ行われていない心筋移植療法の突然死を議論すること自体いかがなものかと考えるが,編集部よりの指示であるのでお許し願いたい.そのため本稿では主に心筋移植療法と不整脈源性について議論してみたい.
不整脈を議論するうえで重要な点は,不整脈には大きく分けて2種類の不整脈が存在することで,一つは異常自動能の亢進(撃発活動),もう一つにリエントリー性不整脈がある.細胞電気生理学の実験では通常単一細胞レベルでの検討が主流となるため,異常自動能に対する検討は詳細に行えるが,リエントリー性不整脈は,ヒトでの実際の検討や,あるいは大型動物による実験的な不整脈の検討が必要となってくる.再生医療の実験で主に利用されているのは,免疫抑制を必要とするためnude mouseやnude ratなどの小動物であり,リエントリー性不整脈の出現に対する考察にはあまり適当ではないかもしれない.また,単一細胞での異常自動能亢進は,その異常細胞が正常組織の中に組み込まれて電気的な結合を生じた場合,その異常自動能も消失する可能性があり,細胞電気生理学での検討がすなわち,ヒトへ実際移植した際の不整脈源として当てはまらないかもしれない.ここで述べる研究の多くは,細胞レベルや小動物での実験が主であり,ヒトでの臨床治験においても,現時点では症例数が少なく,無作為二重盲験試験などによって長期的な予後を確認するまで,この治療法が本当に安全であるか否かを議論することは難しいかもしれない.
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