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はじめに
1997年にアメリカ糖尿病協会(ADA)が糖尿病の新しいガイドラインを発表して以来,食後高血糖と心血管疾患の強い関連が注目されている.それまで食後高血糖と空腹時高血糖は同様の血糖に対する反応性の低下(耐糖能異常)を表していると漠然と考えられてきた.しかし舟形研究において,正常耐糖能群2,016名,耐糖能異常(IGT)群382名,糖尿病群235名の死亡診断書を調査したところ,IGT群の心血管疾患の死亡は正常群に比べ有意に増加しており(ハザード比:2.219,p=0.03),糖尿病の死亡と有意な差がなかったと報告されている.さらにADAの診断基準に従い空腹時血糖異常(IFG)群について再解析したところ,IFG群においては,心血管疾患の死亡は正常群に比べ有意差は認められなかった(ハザード比:1.136,p=0.83).かかる循環器疾患発症頻度の差異は,IFGのグループでは糖負荷後の血糖上昇が少なく,食後の急激な一過性高血糖(グルコーススパイク)がないためと考えられる.
日常診療においては,よく手間のかかる糖負荷を行わず,空腹時血糖やインスリン濃度とHbA1cの値(≧6.5%)で耐糖能の異常をスクリーニングしようとする傾向があるが,The DECODA Studyにおける日本人データの解析では,糖尿病の多くの診断区分においてHbA1cの値は5.5~6.0%とほぼ基準値内であった1)(図1;空腹時血糖も負荷後血糖も両方高い群のみで平均HbA1cが7.0%).また,培養血管内皮細胞を用いた実験においても,高血糖培地で培養した場合より24時間ごとに正常血糖培地と高血糖培地を交互に用いて培養したほうが血管内皮細胞のアポトーシスが増加するとの報告もある.かかる検討から,空腹時血糖は心血管疾患のマーカーではなく,グルコーススパイクがそのマーカーとなる.
そこで本稿では,心血管疾患の発症と深く関わっていると考えられるグルコーススパイクに注目して,心血管疾患について考えてみたい.
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