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綜説
ACE阻害薬を心血管疾患に用いるメリットはなにか―ACE阻害薬の臓器保護作用
What are Merits of ACE Inhibitors(ACE-I)for Cardiovascular Disease:Organ protection of ACE-I
北風 政史
1
Masafumi Kitakaze
1
1国立循環器病センター心臓血管内科
1Department of Cardiology, National Cardiovascular Center
pp.979-988
発行日 2006年9月1日
Published Date 2006/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100457
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はじめに
心血管疾患の進展にレニン・アンジオテンシン系が交感神経系・サイトカイン系と並んで重要な役割を果たしていることは疑う余地がない.アンジオテンシンII(Ang II)が,AT1/AT2受容体を介して血管収縮・細胞増殖などに関与するだけでなく,アルドステロンが線維化などの作用を有するため,心・血管系に多くの作用をもたらすわけである.これらの作用を抑制するためにACE阻害薬(ACE-I)が合成され,高血圧治療薬としてのみならず,臓器保護薬として用いられるようになった.
ACE-Iは,ACEを阻害することによりアンジオテンシンIIの生合成を抑制し,Ang IIを介した作用を抑制する.さらに近年,より直接的にアンジオテンシン受容体を阻害する目的でアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)が合成され上市されている.興味あることに,ACE-IはキニナーゼIIというブラジキニン分解酵素を同時に抑制することにより,組織中ブラジキニン(BK)濃度を上昇させる.ブラジキニンはNO産生増加のみならず多くの心血管保護作用を有するため,おのずとACE-IとARBの薬理作用は異なってくる.
本稿では,ACE-Iの心血管保護作用を臨床・基礎医学的側面のみならず,大規模研究の面から検証することにより,心血管疾患の進展におけるレニン・アンジオテンシン系・ブラジキニン系の意義を考えてみたい.
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