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特集 循環器医からみた糖尿病治療薬の考え方・使い方
耐糖能異常・糖尿病と循環器疾患
The Relationship between Abnormal Glucose Tolerance and Cardiovascular Disease
山本 博之
1
,
松村 泰志
1
,
武田 裕
1
,
北風 政史
2
Hiroyuki Yamamoto
1
,
Yasushi Matsumura
1
,
Hiroshi Takeda
1
,
Masafumi Kitakaze
2
1大阪大学大学院医学系研究科生体統合医学
2国立循環器病センター心臓血管内科
1Department of Medical Information Science, Osaka University Graduate School Medicine
2Department of Cardiovascular Medicine, National Cardiovascular Center
pp.555-559
発行日 2008年6月15日
Published Date 2008/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101047
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はじめに
糖尿病が動脈硬化性疾患を引き起こす主原因の一つであることはよく知られている.糖尿病症例における最大の死因は心血管疾患によるものであり,特に冠動脈や脳動脈の動脈硬化症に起因している1).糖尿病に長期間罹患すると,全死亡のリスクは1.5~2.7倍増加するが,心血管疾患による死亡のリスクは1.5~4.5倍とさらに高くなる2,3). 特にMultiple Risk Factor Intervention Trial (MRFIT)の結果をうけ,糖尿病は心血管疾患による死亡の独立した危険因子であると認識されるようになった4).わが国においても久山町研究,JDCSによって同様の結果が得られている5,6).また,他の動脈硬化危険因子である高血圧・高脂血症・肥満と糖尿病が共存すると相乗的に冠動脈血管疾患など動脈硬化性疾患による死亡のリスクが高くなるため「死の四重奏(deadly quartet)」と呼ばれている.このような観点からも,糖尿病の早期発見・早期治療は循環器分野においても重要な課題である.
近年,糖尿病発症に至らない耐糖能異常でも,高い心血管疾患のリスクになりうることが明らかになって注目を集めている.わが国の舟形町研究においても,耐糖能異常(impaired glucose toler-ance;IGT)と糖尿病では心血管疾患のリスクにあまり差がないことが示されている7).
本稿では,耐糖能異常・糖尿病と心血管疾患の関連に焦点を絞って述べることとする.
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