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増刊号 図説「胃と腸」画像診断用語集2022
病理
Crohn's-like lymphoid reaction
Crohn's-like lymphoid reaction
新井 冨生
1
1東京都健康長寿医療センター病理診断科
pp.725
発行日 2022年5月24日
Published Date 2022/5/24
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403202882
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CLR(Crohn's-like lymphoid reaction)は,消化管癌から1mm以上離れた消化管壁(主に固有筋層,漿膜下層)に散在し,時に胚中心を有するリンパ球の集簇巣に対して1990年にGrahamらが命名した病理組織学的所見である1)(Fig.1,2).Crohn病の類上皮細胞性肉芽腫に類似した形態を示すことからCLRと称されるが,Crohn病との関連はなく,Bリンパ球の集簇巣あるいはリンパ濾胞である.当初,CLRが認められる大腸癌は右側結腸,pT3以深の浸潤癌,低リンパ節転移率,比較的良好な予後との関連が指摘された.CLRは,癌浸潤の先進部周辺でのリンパ球浸潤と同様に宿主応答である可能性があると考えられている.その後,ミスマッチ修復系異常により惹起されるマイクロサテライト不安定性(microsatellite instability ; MSI)のみられる大腸癌との関連が指摘された2).MSIを示す大腸髄様癌や胃乳頭腺癌・充実型低分化腺癌でも高率にみられる3).したがって,CLRを有する胃癌,大腸癌はMSIを示す可能性が示唆される.MSIを示す腫瘍は免疫チェックポイント阻害薬の効果が高いことから近年注目されており,これらの腫瘍の診断や対応が求められる.CLRやTILs(tumor-infiltrating lymphocytes)のような病理組織学的所見を見いだすことがMSIを示す腫瘍の病理診断への一つの手がかりとなりうる.
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