特集 図説 胃と腸用語集2012
画像所見〔食道〕
上皮乳頭内血管ループ(intraepithelial papillary capillary loop;IPCL)
井上 晴洋
1
,
加賀 まこと
1
1昭和大学横浜市北部病院消化器センター
pp.679-680
発行日 2012年5月24日
Published Date 2012/5/24
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403113278
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胃・大腸の腺上皮では,内視鏡の拡大観察において,表面模様(いわゆるpit pattern)が組織の構造異型を観察する指標となる1).しかし咽頭食道の扁平上皮では,表在血管網が観察できるところに特徴がある.この表在血管網の最表層に位置するものがループ状の毛細血管である.このループ状血管を上皮乳頭内血管(intraepithelial papillary capillary loop;IPCL)と呼ぶ.咽頭および食道の表在血管網は,拡大内視鏡観察所見からFig. 1のように推定される2).NBI(narrow band imaging)では樹枝状血管網は緑色に観察され,IPCLは褐色のループ状の線(brown dots)として,最も浅層に観察される(Fig. 2).IPCLは粘膜固有層の結合織を伴いながら,上皮層に乳頭状にほぼ垂直にせり上がってゆく.IPCLは上皮基底層に近接するがゆえに,基底層の構造異型を間接的ではあるが,如実に反映する.このIPCLの変化は,扁平上皮の性状診断,深達度診断に役立つ.
扁平上皮の内視鏡的異型度診断 上皮内癌では,brownish area(あるいはヨード不染部)の中にIPCLの変化として,“拡張”,“蛇行”,“口径不同”,“形状不均一”の4つの要素が認められることが多い(Fig. 3)3).このIPCLの変化は,健常粘膜から癌まで連続的に観察される4),これがIPCLパターン分類である(Fig. 4).この分類では,IPCL type I(健常粘膜)から,IPCL type V(上皮内癌)までに分類される(Fig. 4の赤枠).
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