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編集後記
牛尾 恭輔
pp.624
発行日 1990年5月25日
Published Date 1990/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403110911
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腸疾患の増加を背景に,炎症性腸疾患の鑑別診断が2号に分けて企画された.本号はその(1)として,小腸・回盲部病変を中心に特集された.その(2)では大腸病変を主体に特集号が組まれることになっている.言うまでもないが,炎症性腸疾患は病型と病期によって所見が変わる.また腫瘍と違って多発することが多く,連続性の病変でも病変の中に所見の強弱がみられる.更に自然に,また治療次第によって短期間に形態が変化しやすい.ゆえに腫瘍の場合とは異なった診断法の理論化が要求される.
その真髄は白壁の序説に窺われる.すわなち従来から白壁は,炎症性腸疾患の局所の診断学として,病変を点(point),線(line),面(area)に分け,その組み合わせの所見と変形学で診断する必要性を強調してきた(PLA理論).今回,新たに展開を示している.それは局所の変形学に加えて,病変の深さを粘膜層,粘膜下層,筋層,壁外といった各層ごとの病態を推定しうること,また初めて診たときに総合診断と推移の予測が診断できるようでなければならないと述べ,dynamic double contrast studyという新用語を用いて形態学の方向性を明らかにしたことである.ぜひ熟読していただきたい.
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