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編集後記
牛尾 恭輔
pp.712
発行日 1991年6月25日
Published Date 1991/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403102574
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本誌でCrohn病が特集として,しばしば取り上げられるようになってから,約15年が経過した.最初は疫学,症状や臨床データから始まり,画像診断法,治療法と進み,その長期経過を検討しようとして今回の特集号となった.Crohn病は若年層に多く,かつ再燃・再発を起こしやすく,また症状や臨床データと画像所見の間に解離もみられるので,消化器病を専攻する臨床医にとっても頭の痛い疾患である.正直言って,本特集号は派手さはなく,写真の1つ1つに患者と臨床医の苦悩も読み取れる.だが,各主題論文からは,長期経過を画像の推移からみて,合併症や再発・再燃の予測を行おうとする執筆者の意気込みを,読者の方々は読み取っていただきたい.管腔狭小化,裂溝,縦走潰瘍やcobblestone appearanceを伴った病変は合併症を起こしやすく,また,再発しやすいこと,小病変を切除するために広範囲な切除は望ましくないことなどが示されている.小腸における再発の実態を画像を通して形態学的に明らかにした八尾らの論文,X線所見の増悪要因を腸間膜付着側における微小循環障害の面からマイクロアンギオグラフィーを駆使して検討した西俣らの研究は,欧米ではみられない本邦独特なものである.そこには,美しい画像と組織像に裏打ちされた実証主義が脈打っている.
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