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編集後記
牛尾 恭輔
pp.900
発行日 1997年5月25日
Published Date 1997/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403105160
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腫瘍は細胞自身が多段階的に形質を獲得して,より悪性度が増し,臨床的な癌へと発育進展してゆく.この変化はprospectiveにまたはretrospectiveに,画像上で形態上の変化として認識される.本号はこの視点から胃癌の自然史を追求したものである.
ところで最近,近藤誠氏の“がんもどき理論”という空論が医学の場にも,消化管癌の診断と検診の場にも入り込み,不安をあおり立てている.消化管癌に関して,その空論の間違いは,丸山が序説の中で文字の1つ1つに魂を込めて詳しく述べている.また,市川は多くのたとえ話を例に挙げ,胸がすくようによりわかりやすく説明している.読者の皆様は,熟読していただきたい.さて「胃と腸」は,時間学と形態学に合致した実証主義の下,過去30年余にわたり,多くの早期胃癌や早期大腸癌が個体や時間に差はあるにせよ,進行癌に推移してゆく事実を明らかにしてきた.これに対し極めてまれな例を代用して,あたかも大多数の癌に当てはまるかのごとく述べる近藤氏の“がんもどき理論”は,評論家の枠を越えない空論であると言えよう.本誌はあくまで実証主義に基づいた理論を打ち立て,医療の場に貢献しているからこそ高い評価を得ているのである.今後とも,その立場は堅持され続ける.それが科学としての使命である.
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