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書評「臨床医のための腹部X線造影の実際」
長尾 房大
1
1東京慈恵会医科大学・外科
pp.888
発行日 1975年7月25日
Published Date 1975/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403112396
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X線検査によって得られる情報は,診断・治療のうえで欠くことのできない貴重なものであり,その必要性については,あらためて述べるまでもない.また,癌の早期発見という観点からも数mmの病変を把える精密度も要求されるようになったし,技術的に可能でもある.しかし一方,消化管造影に際して,初心者でも比較的容易に行える反面,このような要求度からみると不適当なものであったり,逆に誤診の原因となったりすることさえある.
本書の特色は,臨床医がより精度の高い結果を得るための努力をする際に,よきアドバイザーとなるように書かれていることである.ことに,初心者にとって,最も必要な実施手技上の注意が細部にわたって述べられており,各検査法における要点が適切にまとまっている.検査前の準備や併用薬剤使用上の注意,造影剤の選択の基準,撮影のタイミングなど,具体的な事項について,十分な配慮がうかがえる.新入局員で,はじめてX線検査をする者にとって,本書の記載どうりの手順で,相当よい写真が可能と考えられるし,X線検査法について,無駄なく上達しうると思われる.また,イレウスなど全身状態の悪い患者の造影法を行うかどうかについて,日常よく判断にまよう場合があるが,その造影法の適否について,明快な解答が用意されており,各種造影法施行後の合併症に対する処置の問題にまでふれている.この点では,各種検査法についてのベテランといえども大いに参考となるところである.より多くの精密な情報を得るための工夫のほかに,患者と対面している臨床医にとって,X線検査がスムーズにいくように配慮されている.常にハンドブックとしてそばに置いておきたい本である.
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