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4月中旬,吉田裕司著になる「胃X線読影の基本と実際」が送られてきた.吉田氏の前著「胃X線診断の考え方と進め方」の続編である.前編のほうは,過去数十年,経験と直感に頼ってきた胃X線読影法を,著者なりに分析し,いわば文法書を作るつもりで,豊富な症例と体験を結集した労作であった.読影の初心者に能率的な学習法を示唆し,既にこの道に入って形態学の難しさと奥深さに迷える者には前途に光明と勇気を与えたと言っても過言ではない.
今般発行された続編「胃X線読影の基本と実際」は前半約85ページと後半約200ページに分かれており,前半は読影の基本が要領よくまとめられ,いわば前著のアブストラクトと言ってよい.けれども図版や説明はよりわかりやすくした苦心のあとが現れている.前著に較べ紙質も格段に上質で症例の写真も綺麗になっているのが嬉しい.この本のハイライトは,何と言っても後半の読影の実際200ページである.この編は前著「胃X線診断の考え方と進め方」で示された科学的,合理的な読影法の応用編と言える.実際の読影にあたってこの法則をいかに運用すべきかを,日常出会う典型的20症例を科学的に解析しながら,極めて親切かつ明快に述べている.「ここまでしか読めない」とか「これ以上読んではいけない」とか,未熟な読影者が常に迷うところを,実際の症例についてわかりやすい納得のゆく理由を挙げて説明するなど,心憎いばかりの気配りが読み取れる.ここでも豊富な美しい写真がふんだんに取り人れてあるのが特徴である.前著「考え方」ではこの種の書物では珍しく胃X線撮影法について72ページを割いて技術的な説明がなされていた.正しい診断の大前提は読影に耐える写真を作ることである.この方面に関心をもたれる人にも本書の写真版は参考になるはずである.
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