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書評「胃X線診断の考え方と進め方」
打田 日出夫
1
1奈良県立医科大学
pp.784
発行日 1986年7月25日
Published Date 1986/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403110345
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わが国における胃X線診断学が,今日欧米先進国のレベルを遙かに凌いで世界の最先端を歩んでいるのは市川平三郎先生をはじめのとする多くの共同研究者のご努力によるものであることは,今更述べるまでもないことである.X線二重造影法の開発により微小病変が鮮明に描出されるようになり,早期胃癌の発見率が急速に上昇した実績は,胃X線診断の革命的進歩として歴史に刻まれるであろう.胃微細病変のX線診断と内視鏡診断との競合ならびに手術・病理組織所見との綿密な対比とX線診断へのフィードバックは,画像診断の精度向上に直結する重要な基本的姿勢として評価されており,この胃X線診断の臨床的研究手法は他の臓器においても模倣され,画像診断の臨床研究における指針となった.
しかし,最近,胃X線診断はあまりにも普及したために安易に流れ,非常に大切であるにもかかわらず,陳腐な感覚すら与えがちになってきた,このような時期に市川・吉田両先生により上梓された本書は,胃X線診断学に再び新鮮さを与え,胃X線診断が興味深い深遠な学問であることを改ためて教示した.市川先生らによる名著「胃X線診断の実際」文光堂,1964)が刊行されから20年以上が過ぎた現在,その後の進歩と新知見が盛り込まれた著書の出版が待ち望まれていた矢先,この要望がかなえられたわけである.
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