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書評「胃X線読影の基本と実際」
坪井 栄孝
1
1坪井病院
pp.1240
発行日 1989年11月25日
Published Date 1989/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403106611
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近代医療における各種の診断学はコンピューター技術の導入によって大きく変貌を遂げつつある.X線診断学の分野においてもCT(computed tomography)やCR(computed radiography)の出現によって臓器の形態や病変の範囲をより正確に,あるいは多角的に表現する技術が進歩し,この領域の画像診断技術に格段の向上をもたらしたことは確かである.しかしそれは診断の対象とするものの形態をより解剖学的本態に近く描出する技術の進歩であり,描出された画像のパターンをコンピューターが認識して,疾病診断に結びつけるまでには至っていない.画像診断は病変部の描出技術の質もさることながら,情報として提供されている画像因子を,あらゆる医学知識を総合して判断し,いかに正確な診断を下すかということに主眼があることは言うまでもないことであり,X線単純像であれ,CT像であれ異なるものではない.
著者の一人である市川平三郎博士も本書の序でこのことに触れ,画像診断には数字では表しきれない無数の情報があり,将来はともかくも現在は描出されているいろいろな因子を肉眼的に丁寧に読み取っていく努力が最も大切であることを軽妙な体験談を混じえて強調している.
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