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本書を読んで,まず感じたことは,従来の胃疾患を取り扱った著書にはみられない構成と内容の豊富さである.一般の教科書をみれば,すべての項目が個条書に網羅されているが,臨床に一番重要な形態診断に大きな比重が置かれていないため実際に役立たないものが多い.また,形態診断だけの専門書をみれば,実践に対してはかゆい所まで行き届いている反面,重箱の隅をつつくきらいがあり,胃疾患を全体から把握していない.読者の目的によって,教科書,専門書はそれなりの価値がある.しかし,そのような時代があまりにも永く続き,同じような著書があらゆる角度からつつかれ,あり余るほど店頭にあふれ出ている.恐らく良書を選択するのに困っているというより,うんざりしているのは筆者1人ではあるまい.
このようなときに,本書は一服の清涼剤を与えてくれる.簡潔でかつ読み応えがあるからである.胃について臨床に必要で十分な基礎知識から診断,治療に至るまでの項目が重要度に応じて,ときに詳細に,ときに軽く,それらが分離することなく一連のものとして書かれている.それでいて,すべての必要な要素を漏らすことなく250頁たらずの中にまとめあげている.自分で研究していない所はなかなか書けないものである.書いたとしても,所詮翻訳と同じで迫力がない.中沢先生のグループが,いかに多方面から胃疾患を研究しているかを他面から証明していることになる.総論と各論を分けずに,疾患の説明に入っていることも両者を切り離せるものでないという考えからだと思う.それでいて胃疾患をあますことなく論じている.この1冊があれば胃疾患の現在の医学の最先端の知識を修得できるだけでなく,平易に理解することができる.
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