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「大腸癌診療マニュアル」は一言ですばらしい本である.著者は序の中で,“一般外科の修練過程にある若い外科医を対象に書いた”と述べているが,とんでもない誤りである.大腸癌を専門にしていると自負している医師もこの本を読んで必ず得るところがあり,明日から実際に役立てるはずである.すなわち,大腸癌のどの方面から診療にかかわるにしても,本書の内容はすべての臨床医によって重要な知識であり,第線の現場で役立ち,最良の医療の基となることばかりである.大腸癌の診断では検診の普及による拾い上げ,診察の仕方,注腸造影および内視鏡検査,超音波検査などの細かなことだが絶対に必要なことのみを,箇条書きにして極めてわかりやすくまとめている.大腸癌の病態の理解には病理が必要で,病理所見の項目だけでなく必要な部分では肉眼像,ルーペ像,弱拡大あるいは強拡大の顕微鏡像を示して理解しやすく工夫されている.
また,大腸癌の治療では早期癌の治療方針とその具体的な方法から始まって,進行大腸癌を結腸と直腸に分け,特に直腸癌では選択する術式の適応を明確にし,日常の診療でしばしば遭遇するイレウスを起こしている進行癌の治療方針とその実際などと大腸癌の治療については全体に痒いところに手が届くように書かれている.もし本書のとおりに手術をすれば最高の医療を患者に提供することができることであろう.後半では大腸癌患者の術後follow-upの仕方,術後の遠隔転移再発症例の対処とその方法,化学療法および放射線療法などについても極めて実践的に具体的に,要点を理解しやすく書かれているのは,著者がどれだけ多くの患者を直接診療しているか,その豊富な経験に負うところ大である.
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