図解・病態のメカニズム—分子レベルからみた神経疾患・12
ミトコンドリア脳筋症
米田 誠
1
1名古屋大学医学部生化学第2講座
pp.1615-1619
発行日 1996年8月10日
Published Date 1996/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402905245
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ミトコンドリア脳筋症は,生体のエネルギープラントであるミトコンドリアの酸化的リン酸化系(電子伝達系とATP合成酵素)の遺伝的障害によって,神経・筋を主体とした多彩な症状を呈する疾患群である.網膜色素変性症・外眼筋麻痺・心伝導障害を主徴とするKearns-Sayre症候群(KSS),小児の脳卒中様発作・乳酸アシドーシスを主徴とするMELAS症候群(mitochondrial myopathy, encephalopathy, lactic acidosis and stroke-like episodes),ミオクロヌスてんかん・小脳失調・痴呆を主徴とするMERRF症候群(myoclonus epilepsy as-sociated with ragged-red fibers)が三大病型とみなされているが,これらのほかにも各種の臨床型が認められている.神経・筋以外の症状を主体とする病型も多く見いだされているため,ここでは広くミトコンドリア病という名称を用いる.
近年の分子遺伝学的解析によって,これらの各種臨床型における特異的ミトコンドリア遺伝子(mtDNA)変異の存在が明らかになってきた1〜3).mtDNAは染色体上の核遺伝子とは大きく異なるいくつかの遺伝学的特徴をそなえており,ミトコンドリア病の特異な病態を規定している.
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