医道そぞろ歩き—医学史の視点から・31
心電図学の創始者エイントーフェン
二宮 陸雄
1
1二宮内科
pp.2264-2265
発行日 1997年11月10日
Published Date 1997/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402904835
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心臓の搏動に伴う電気的変化に気づき,これを記録する試みは19世紀の中頃に始められた.1843年にはイタリアのマッテウッチがハトの心臓の電位変化を観察し,ドイツのケーリケルらがカエルの神経筋肉標本を心臓の上に置くと収縮することを発見している.1878年には,イギリスで毛細管電流計を使って心臓の活動電流が記録されているし,1887年には,ロンドンでワラーが自宅に研究室を作って体表の電極から心臓の活動電流を記録した.しかし,当時使われていた毛細管(水銀)電流計は精度が低く,心臓の活動電流以外の変化も加わって,計算補正を行っても真の心電図を得ることは難しかった.
エイントーフェンがユトレヒト大学で医学の学位を得たのはワラーの研究が始まった頃である.父はインドネシア派遣軍の医師で,現地人との間に4人の子をもうけ,妻の死後オランダ女性と結婚して,6人の子が生まれた.その1人がエイントーフェンである.やがて母は子供たちを連れて帰国し,エイントーフェンはユトレヒト大学で医学を学んだ.この入学資格に必要なギリシア,ラテン語の学習はエイントーフェンに終生にわたる深い西洋古典への関心を植えつけ,折りにふれて古典の1節を暗唱してみせたという.冗談が好きで,率直で真摯な人であった.
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