医道そぞろ歩き—医学史の視点から・22
経口血糖降下剤の開発とモンペリエ
二宮 陸雄
1
1二宮内科
pp.406-407
発行日 1997年2月10日
Published Date 1997/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402904396
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第二次大戦中,ドイツ軍に占領されていた南フランスのモンペリエで腸チフスが流行した.その治療にスルフォナマイド剤のIPTD(VK57,2254RP)が使われた.モンペリエ医学校のジャンボンらが,30人の腸チフス患者にこの薬を投与したところ,持続的な低血糖を起こして3人が死亡した.ほかにも痙攣や意識障害を起こした患者がいたが,ブドウ糖で回復した.ジャンボンらは,この事故を1942年に「モンペリエ医学雑誌」に報告した.
ジャンボンは,当時モンペリエ大学の生理学部のヘドン教授の下にいたルバチエのところに行って,この事故のことを話した.そして,事故の原因をどう考えたらよいか意見を求めた.ヘドンは糖尿病と膵臓の研究で有名なヘドンの息子である.ルバチエらは1942年の6月13日に犬で実験を始めた.ルバチエは次のように書いている.「一夜絶食した犬に2254RPを食べさせると,進行性で高度で持続性の低血糖が起き,血糖は50mg/dlに低下した.……膵臓摘出犬ではこの作用はない.」
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