増刊号 Common Disease 200の治療戦略
消化器疾患
肝性脳症
杉原 潤一
1
,
佐々木 稔
1
,
森脇 久隆
1
,
武藤 泰敏
1
1岐阜大学医学部第1内科
pp.191-193
発行日 1995年11月30日
Published Date 1995/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402904040
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疾患概念と病態
肝性脳症とは,高度な肝機能障害に基づいて,意識障害をはじめとする多彩な精神神経症状をきたす症候群である.肝性脳症は成因の面から,壊死型とシャント型に大別して理解されてきた.前者は広汎な肝細胞の壊死脱落により,アンモニアをはじめとする脳症惹起因子の解毒能が著減して肝性脳症をきたすものであり,劇症肝炎が代表的である.一方,後者は肝細胞量は保たれているものの,シャントのため肝血流量が低下しており,脳症惹起因子を処理する能率が低下して肝性脳症をきたすもので,Eck瘻症候群が代表的である.しかし日常臨床上,最も遭遇することの多い肝硬変脳症は,両者の要素が混り合った中間型として位置付けられている1).特に治療対策や予後の観点から,当教室では肝性脳症にかかわる各種パラメーターを多変量解析を用いて分析した結果,肝性脳症を①急性型,②末期昏睡型,③慢性再発型,の3型に分類することが最も有用であった2).このうち急性型は劇症肝炎が典型的であり,肝硬変にみられるのが慢性再発型と末期昏睡型である.
このように肝性脳症の病態は多岐にわたるが,黄疸や腹水とともに肝不全の最も中心的な徴候の一つであり,病態を速やかに診断して早期に治療を開始することが重要である.劇症肝炎の治療については別項にゆずり,本稿では肝硬変脳症に対する治療を中心に概説する.
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