増刊号 診断基準とその使い方
VI.代謝
18.有機酸尿症
成澤 邦明
1
1東北大学医学部・病態代謝学
pp.1988-1991
発行日 1988年9月30日
Published Date 1988/9/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402221975
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有機酸尿症は酵素の遺伝的欠損に基づいて,それに関連した有機酸ないしその誘導体が血中や尿に大量に認められる疾患である.その主な疾患を表1に示した.これらの発生頻度の詳細は不明であるが,われわれが昭和60年に行った本邦における有機酸尿症の全国調査によれば,過去10年間の有機酸尿症の総数は148例で,そのうち頻度の高いものは高乳酸血症(67例),メチルマロン酸血症(47例),プロピオン酸血症(18例),イソ吉草酸血症(6例)であった.最近では毎年少なくとも20例以上の新しい症例が見いだされている.
有機酸尿症の多くはその発見が遅れ早期治療がなされないときは,精神発達の遅れや時には命取りになることも少なくない.したがって早期診断が重要であるが,現時点では診断基準はまだ作成されていない.有機酸尿症の診断基準作成の難しさは,各疾患に特異的な症状や臨床検査所見に欠けており,診断の大部分が尿や血中の有機酸分析に依存していることによると思われる.
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