分離分析の技術Ⅱ・1【新連載】
ガスクロマトグラフィー/質量分析法—有機酸尿症の解析
松本 勇
1
Isamu MATSUMOTO
1
1久留米大学医学部ガスクロマト—質量分析医学応用研究施設
pp.70-77
発行日 1983年1月15日
Published Date 1983/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542911776
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はじめに
ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS法)は,分離能の優れたガスクロマトグラフ(GC)で分離したピークに含まれる化合物を,GCと直結した質量分析計(MS)で直ちに検出,同定し,さらに定量も行う高感度,高精度の分析法で,分離分析という観点からは,MSはGCのFIDやECDなどに相当する検出器と考えることができる.ただし,GCのFIDやECDなどとは異なるいくつかの特徴を有する.そのもっとも大きな特徴は,MSはそれ自体GCや液体クロマトグラフなどの分離分析用機器とは異なる,構造解析用の独立の分析機器である点である.種々の分離技術の中で,前述のようにGCは格段に高い分離能を有するが,しかし化学構造や分子量が非常に類似した化合物では,相互に分離できないものも少なくない.特に多数の代謝産物を含む体液成分では,類縁の化合物が多数含まれるため,同一ピークの中に2,3個の化合物が含まれることも珍しくない.このようなピークは,FIDやECDを用いる限り,相互に区別できず,単一の化合物として取り扱うことになり,誤った結論を招くことも避けられない.その1例を紹介しよう.
ホモバニリン酸(HVA)は,ドーパミンから酸化的脱アミノおよびカテコール—o—メチル転移反応によって産生し,ヒトの脳脊髄液や尿中に多量に検出される.
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