増刊号 臨床化学実践マニュアル
II.日常検査における異常値への対応
4.糖・糖関連成分,有機酸成分
(2)有機酸成分
平野 哲夫
1
1東京警察病院中央検査第一部臨床化学
pp.106-108
発行日 1993年4月15日
Published Date 1993/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543901501
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■ピルビン酸・乳酸・ケトン体の代謝の相互関係
生体成分を分析するに当たっては,まず測定される項目の生体内での動態を把握しておく必要がある.これら有機酸の代謝の相互関係についてごく簡単に触れておく.
ピルビン酸は多種にわたる代謝経路の交差点に位置している.細胞内では主にグルコースの嫌気的解糖によって生ずる中間代謝産物である.組織の酸素が十分でないと,ピルビン酸は乳酸脱水素酵素により還元され乳酸となり,NADH(nicotinamide adenine dinucleotide)が酸化されてNAD+となる.乳酸は嫌気的解糖の終末代謝産物として,生体のあらゆる組織で産生され,大部分が肝と腎でTCAサイクルや糖新生の基質として再利用される.ケトン体は肝での遊離脂肪酸の代謝産物であり,アセト酢酸,ヒドロキシ酪酸およびアセトンの総称名である.図1にこれら3者の代謝の関連性を示した.ケトン体は肝で利用されず肝外組織により再びアセチルCoAとなり,TCAサイクルで再利用される.これら乳酸・ケトン体は陰イオン有機酸として血中に存在し,酸・塩基平衡に重大な役割を演じる.乳酸アシドーシスあるいは糖尿病性ケトアシドーシスは,しばしば臨床で経験される代謝性アシドーシスである.
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