増刊号 診断基準とその使い方
IV.肝・胆・膵
3.ルポイド肝炎,自己免疫性肝炎
溝口 靖紘
1
1大阪市立大学医学部・第3内科
pp.1844-1845
発行日 1988年9月30日
Published Date 1988/9/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402221916
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■自己免疫性肝炎の概念
1956年Mackayは,LE細胞現象を伴い,いくつかのSLE様の臨床症状を伴う活動性の肝炎に対し,初めてルポイド肝炎(lupoid hepatitis)と名づけた.ところが,本症を特徴づけるLE細胞現象は,その検出が常時認められるものではなく,時期を失すると本来陽性であるべき症例でも陰性の結果しかえられないことが判明し,さらに自己免疫性を示す所見として,LE細胞現象のほかに,抗核抗体や抗平滑筋抗体などの自己抗体が本症で認められることが明らかとなった.そこで,1965年再びMackayは1)これら一群の活動性慢性肝炎が,たとえウイルス性肝炎として始まったとしても,肝における自己免疫反応の持続が,進行性の肝細胞破壊の原因であると考え,自己免疫性肝炎(autoimmune hepatitis)なる名称を与えた.ここではもはやLE細胞現象は必須とは考えられなくなった.現在,LE細胞陽性のルポイド肝炎,およびLE細胞陰性,抗核抗体陽性のルポイド肝炎類縁疾患を自己免疫性肝炎と呼んでいる.
本疾患は異常な免疫応答能の存在によって生じた肝に対する自己免疫現象が病態の主体をなし,この病態の成立機序に免疫遺伝学的背景の関与が強く示唆される活動性で進行性,破壊性の慢性肝炎の一群として把握されると考えられる.
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