増刊号 診断基準とその使い方
III.消化管
9.急性胃粘膜病変
並木 正義
1
1旭川医科大学・第3内科
pp.1802-1803
発行日 1988年9月30日
Published Date 1988/9/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402221900
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■診断基準とその解説
診断上の必要条件を簡明にまとめたものを診断基準とするならば,急性胃粘膜病変(acute gastric mucosal lesions;AGML)のそれは表1のようになる.あえてエックス線診断を文中に入れなかったのは,確定診断はやはり内視鏡検査によらなければならないからである.実際において,表1に示したような急性の臨床症状を呈して来院し,AGMLが疑われる場合には,まず内視鏡でみるのが一般的である.そのほうが急性の粘膜変化,特に出血などの様相は具体的にわかるし,必要に応じて内視鏡的止血も可能だからである.もちろんエックス線検査でも,粘膜浮腫の状態や,多発する潰瘍性変化の所見は診断上参考になる.
症状のところで,"多くの場合"としたのは,老年者などで,自覚症状がなくてもAGMLの所見を有する例に遭遇するからである.要は自覚症状よりも内視鏡所見が診断の決め手となる.またAGMLをみたなら,その発生要因については当然考慮しなければならない.主な発生要因を表2に示す.だが,AGMLの内視鏡所見は各要因によって様相が異なるといったことは,特別な場合を除いてはあまりない.内視鏡所見のところで,明らかな炎症性変化としたのは,ごく軽度の赤発,浮腫,点状出血斑まで含めたのではきりがないからである.
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