増刊号 診断基準とその使い方
III.消化管
8.胃癌
中村 圭也
1
,
青池 晟
1
,
川井 啓市
1
1京都府立医科大学・公衆衛生学教室
pp.1798-1800
発行日 1988年9月30日
Published Date 1988/9/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402221899
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■疾患概念と疫学
胃癌は胃の粘膜より発生する上皮性の悪性新生物であり,癌組織が胃壁の粘膜下層までにとどまるものを早期癌(転移の有無は問わない),粘膜下層を越えて固有筋層以下の深部に浸潤したものを進行癌という.
わが国の胃癌の訂正死亡率は男女とも世界で群を抜いて高く,最も低いアメリカ白人の約十倍である.年次別の胃癌の訂正罹患率は全癌のそれが若干の上昇ないし横ばいであるのに対し,男女とも減少傾向にあり,また訂正死亡率も順調に減少しているにもかかわらず,死亡数および死亡率はあまり大きな変化はなく,昭和60年の胃癌の死亡数は年間48,902人である1).これは人口の高齢化と高齢者ほど死亡率が高いことの反映であろう。胃癌発生率は40歳代から70歳までに高く,60歳代が32.6%と最も高い.男女比は約1.9:1で男性に多いが,40歳未満では女性のほうが多い.昭和56年以来,わが国では悪性新生物が死因の第1位となり,胃癌はその中でも約30%と最も多く,未だ国民病的な感が強い.
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