増刊号 診断基準とその使い方
II.呼吸器
2.肺気腫
川城 丈夫
1
1慶応義塾大学医学部・内科学
pp.1732-1734
発行日 1988年9月30日
Published Date 1988/9/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402221877
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
■疾患概念と疫学
肺気腫は「終末細気管支より末梢の気腔が非可逆的に拡大している状態であって,それらの壁の破壊を伴い,明らかな線維化を伴わないもの」という病理解剖学的定義が1987年Amer ThoracicSocietyによって採用されている.それによるとさらに肺気腫は,①細葉の近位部位である呼吸細気管支に主として病変が存在する細葉中心性肺気腫(centriacinar),②細葉を構成するいずれの部位にも病変がほぼ均等に存在する汎細葉性肺気腫(panacinar),③細葉の遠位部位である肺胞道・肺胞?に主として病変が存在する遠位細葉性肺気腫(distal acinar)に分類されている.これらが同一症例に混在することも少なくない.臨床の場においては,これらの終末細気管支・肺胞系の病理形態学的異常によってもたらされる病態をいかに検出するかが問題となる.
一般に本症は比較的高齢になって労作時呼吸困難を自覚し,次第に呼吸機能が低下しそれによる労作制限が進行する.必ずしも全例ではないがその多くは呼吸不全の急性増悪を繰り返しながら経過する.しかしながら,生命予後は比較的に良い.なかには肺気腫でありながら健常人の平均余命を越えて生存する例も見られる.
Copyright © 1988, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.