今月の主題 脳卒中up-to-date
疫学的問題
わが国における脳卒中の頻度と病型の推移
田中 平三
1
1東京医科歯科大学・難治疾患研究所疫学部門
pp.2488-2491
発行日 1987年11月10日
Published Date 1987/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402221381
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
脳卒中死亡率の経年推移
死亡診断書の妥当性が病型別脳卒中死亡率に少なからず影響をおよぼしている1).1970年代に入ってCTが全国各地に普及し,入院治療も常識となってきた.しかし,以前は,また近年でも老人の場合には,脳卒中の診断は病歴と理学的検査からなる"臨床診断"に依存している.現在でも老人患者(1985年全脳卒中死亡数の82.4%が65歳以上)の入院率は低く,したがってCT受検率も低い.老人患者の多くは実地医家(開業医)の往診と家庭看護を受けている.死亡者の剖検率は今もなお低い.病型を無視して,脳卒中と一括すれば,実地医家が脳卒中を脳卒中と"臨床診断"する感度(sensitivity)と,非脳卒中を非脳卒中とする特異度(specificity)は極めて高いが,以前では脳梗塞を脳出血と誤診する傾向があり,近年では軽症の脳出血を脳梗塞と"臨床診断"する傾向が認められている.実地医家の診断習慣を検討してみると,脳梗塞を脳出血と誤診しているというよりも,むしろ,病型鑑別にこだわらずに,「脳溢血」あるいは「脳出血」という言葉を「脳卒中」の同意語として用いているようである.図1をみると,脳梗塞訂正死亡率は1955〜1970年に増加している.
Copyright © 1987, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.