臨時増刊特集 エコー法の現況
Ⅱ 診断と治療への応用
B 腹部エコー法
60.産科・婦人科疾患—胎児病の治療
中野 仁雄
1
1九州大学医学部・婦人科学産科学
pp.2414-2417
発行日 1985年12月1日
Published Date 1985/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402220096
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胎児病
ヒトは,40週の胎内生活を営む間,さまざまな変貌を遂げ,形態も機能も胎外生活に適う条件を備える.一方,遺伝と環境の交互作用効果とみなされる個の特徴発現は多岐にわたり,時には疾病として取り扱うべき事態をも生じる.胎児病はこのような異常のなかに位置づけられるが,成人や小児の疾病と異なり,胎内から胎外へと環境が変化するのに合わせて成し遂げるべき適応現象の可否も含める点にある.
今日,妊娠後期から新生児期早期にいたる期間を統合して周産期と称している.その間の児(胎児と新生児の双方を含むのであるが)は周産期学の取り扱うところとなり,周産期医療が実践されている.周産期医学の成り立ちは歴史的には次のように異根同体と解すべきである.はじめは,出生後の異常を出生前に求める,いわば後方視的な立場で出生前小児科学が発展した.これに対して,各種の胎児診断法が開発され,その臨床応用の機会が増すにしたがって,前方視的に臨床胎児学が実現されたのである.当然,この両者は結合するところとなり,今日があるわけであるが,さらに言及すべきは,胎児期,新生児期の現実的な隔壁となっていた分娩に対して,適応生理の概念が導入され,これによってその間の児(胎児・新生児)を管理するようになったことである.胎児・新生児が等価,不可分の関係にいたった理由の1つといえる.
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