今月の主題 肝硬変と肝癌
肝癌の治療と対策
栄養
西平 哲郎
1
,
黒川 良望
1
Tetsuro Nishihira
1
,
Yoshimochi Kurokawa
1
1東北大学医学部・第2外科
pp.1524-1525
発行日 1983年9月10日
Published Date 1983/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402218425
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内頸静脈や鎖骨下静脈から細いカテーテルを上大静脈に挿入し,それまでの輸液方法では考えられなかった高熱量投与を可能にした経中心静脈高カロリー輸液法(lntravenous hyperalimentation:IVH)の導入は,単なる栄養管理,栄養改善という域を越え,創傷治癒や患者の救命という点で飛躍的な効果をもたらした.
たとえば,癌悪液質(cancer cachexia)と呼ばれるような,進行性の体重減少,貧血,食欲不振,無力状態を主とする臨床症状をもつ癌末期患者に対し高カロリー輸液法を実施すると,前述の諸症状が著しく改善し,外観からは癌末期患者であることを疑わせるような症例に頻々遭遇するにいたった.この事実から,癌悪液質の主体は栄養不良であることが明らかとなり,高カロリー輸液法による栄養改善がより積極的な癌治療を可能にしてきている.肝癌が,蛋白合成や生体のホメオスターシスの維持に必要な物質を作りだす肝臓より発症しているという特殊性は,、抗癌療法においても他臓器癌とは異なった問題を惹起させた.その重要な問題の1つが肝癌患者における栄養であり,本稿においては,癌と栄養について述べる.
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