肺気腫患者の息切れ感，抑うつ傾向に与えるlung volume reduction surgeryの影響―comprehensive dyspnea inventoryとself-rating questionnaire for depressionを用いて

The Influence of Lung Volume Reduction Surgery on Short of Breath and Depression Levels in Patients with Pulmonary Emphysema: Utilizing Comprehensive Dyspnea Inventory and the Self-rating Questionnaire for Depression.

はじめに

　肺気腫患者では息切れ感のためにそのライフスタイルが長期にわたり制限を受け，身体的のみならず心理的にも支障をきたし，うつ傾向を認めることが多いとされている¹⁾．また，息切れ感の原因としては，換気力学的問題や呼吸筋の筋力レセプターの異常，高次中枢神経系の情報統合能力の異常などの他に，情動の関与も指摘されている^2，3)．近年開発された重症肺気腫の外科的治療法であるlung volume reduction surgery（LVRS）が，肺機能のみならずQOLの改善にも効果があったという報告が諸外国^4，5)や国内⁶⁾において報告されている．しかしながら，これまでLVRS後の息切れ感と情動との関係について詳細に検討した報告はない．

　今回われわれは，肺気腫患者の息切れ感，うつ傾向を，Comprehensive Dyspnea Inventory（CDI）⁷⁾，self-rating questionnaire for depression（SRQ-D）⁸⁾を用いて，LVRSを施行した群の術前，術後3，6，12か月後と，LVRSを施行しなかった群の入院中，退院後3，6，12か月で比較した．また，LVRSを施行した群の術後の呼吸機能・運動機能の経時的な変化が，それぞれの時点における心理およびうつ評価ではどのように影響しているかを詳細に検討した．