今月の主題 心筋梗塞のハイライト
発症
心筋梗塞発症のメカニズム
河合 祥雄
1
,
加納 達二
1
,
岡田 了三
1
Sachio Kawai
1
,
Tatsuji Kano
1
,
Ryozo Okada
1
1順天堂大学医学部・循環器内科
pp.8-14
発行日 1983年1月10日
Published Date 1983/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402218096
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心筋梗塞の定義
心筋梗塞は病理総論的見地からは循環障害による心筋の壊死をいう.定型的梗塞にみられる凝固壊死は核の消失と,細胞質の均一な好酸性染色性をもって,その特徴とし,光顕的には梗塞後6時間生存した例ではじめて観察される.虚血性壊死巣の大きさについては慣用的に肉眼的に判別しうる大きさをもつもの(通常0.5cm1)ないし1.0 cm以上2))を梗塞と呼んでいる.きわめて小さな壊死巣はfocal necrosisまたはmicroscopic infarctと呼び,梗塞と区別する.これはいわゆる冠不全(高度冠状動脈内腔狭窄)においても,その冠状動脈灌流域の心内膜寄りに微小心筋壊死やそれに続発する巣状心筋線維症がみられる(Bucher,1956)ことと区別する意味がある.病理学的に梗塞は貫壁性(transmural, regional)梗塞と心内膜下(subendocardial)梗塞に大別されるが,全周性心内膜下梗塞は多くの場合,冠状動脈多枝(通常3枝)の中枢側の高度狭窄を前提とし3),貫壁性梗塞とはその発生機序・病理・臨床経過・予後を異にし,むしろいわゆるchronic coronaryinsuffciencyの延長上に位置する病型である.
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