Japanese
English
特集 心筋梗塞
血液凝固能からみた心筋梗塞の発症
On the Role of Hypercoagulability of Blood in the Development of Myocardial Infarction
村上 元孝
1
,
松田 保
1
Mototaka Murakami
1
,
Tamotsu Matsuda
1
1金沢大学医学部第2内科学教室
12nd Department of Internal Medicine, School of Medicine, University of Kanazawa
pp.25-32
発行日 1971年1月15日
Published Date 1971/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202224
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緒言
本特集において著者の与えられたテーマは,心筋梗塞の発症を,広義の血液凝固と関連づけて論ずることであるが,血栓の発現に際して,血液凝固性の亢進が促進的に作用することについては,すでに1862年Virchowが指摘している。Virchowは,血栓成立の要因として血液凝固性の亢進のほか,血管壁の異常,ならびに血流の速度もしくは性質の異常をあげ,これがいわゆるVir——chowのtriadとして広く知られているのであるが,もちろん,心筋梗塞の発症に最も重要な因子となるのは,血管壁の異常——冠動脈の硬化ならびに狭窄——であり,血液凝固性の亢進が本症の成立に際してどの程度の役割を演ずるかは疑わしい。しかし,今日,血液凝固性の亢進と心筋梗塞の発症との関連に特に興味が持たれるのは,Virchowのtriadのうち,とにもかくにも臨床的に手を加えることのできるのは血液凝固性のみであり,この点,もし血小板系,凝固系,線溶系ないし血液粘稠度などを含めた広い意味での血液凝固性の亢進が,心筋梗塞の発症に多少とも促進的に作用する可能性があれば,薬剤の投与により,これらの要因を反対方向に動かすことによって,心筋梗塞の発現を予防しうるのではないかと考えられるためであろう。ことに,血液は試験管内において,種々の条件の下で検索をすすめることができるので,問題を単純化し,あるいは分析することが比較的容易である。
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