今月の主題 心筋梗塞のハイライト
心筋梗塞は予知できるか
太田 怜
1
Satoshi Ohta
1
1三宿病院・循環器科
pp.6-7
発行日 1983年1月10日
Published Date 1983/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402218095
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心筋梗塞は,そのほとんどが冠硬化症を基盤として発生する.そして冠硬化症は,高血圧,高脂血病,糖尿病などのリスクファクターに支えられているとすると,冠硬化症のリスクファクターを多く持っている人に,心筋梗塞の発生率の高いことも事実である.したがって,個々のリスクファクターが高度であること,そしてそれらを複合して持っていることが,すなわち心筋梗塞の予知につながるものであろう.しかし,それらの人がすべて心筋梗塞になるわけではない.冠硬化症のリスクファクターを多く背負った人のうちのどの人が心筋梗塞になるのかというように,心筋梗塞の予知をもっと狭い範囲に限局すると,これはかなり難かしいことである.心電図があるという反論がかえってくることであろう.しかし,人間ドックなどで心電図検査をうけ,運動負荷試験まで行った揚句,心臓については大鼓判を押された人が,それから旬日にして心筋梗塞になったという例は多くきかれるところである.筆者の知っている例でも,寒い日ワカサギを釣りに行ってはじめて狭心症の発作を覚えたある会社員が,その翌日会社の診療所で負荷心電図をとってもらったが,それにも虚血性変化は認められず安心していたところ,その翌々日,立派な前壁梗塞を発症し,ショックで死亡した例がある.すなわち,このような場合心電図は心筋梗塞の予知にまったく役立たなかったということになる.
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