今月の主題 心膜疾患の臨床
二次性心膜疾患
腫瘍性心膜炎
中山 龍
1,2
,
秋田 穂束
1
Ryu NAKAYAMA
1,2
,
Hozuka AKITA
1
1国立循環器病センター病院・内科
2国立循環器病センター病院・総合外来部
pp.54-55
発行日 1980年1月10日
Published Date 1980/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216367
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- 文献概要
はじめに
「腫瘍性心膜炎」が正しい表現であるのか,あるいは「炎」という文字を使用しないで,たとえば「二次性心膜悪性腫瘍二のような表現をとるのが正しいのか議論のあるところであるが,内科学用語集(日本内科学会編,改訂第3坂)に「癌性心膜炎」(carcinomatous pericarditis)なる用語の記載があり,1973年L. L. Richの論文にもcarcinoid pericarditisとあるので,本稿においても「心膜炎」を使用することにする.ただしNewYork Heart AssociationのCriteria CommitteeによるNomenclature and criteria for diagnosis(第6版)にNeoplasm of the pericardiumはあるが癌性心膜炎に相当する用語はみあたらない.臨床的には悪性腫瘍心膜転移のほとんどの場合に心膜腔に滲出液貯留を認めるので,むしろ「心膜炎」の表現のほうが実感があるともいえる.腫瘍性心膜炎の場合も他の心膜炎同様,滲出液貯留のあることによって診断が容易になる場合が多い.しかし,心膜液貯留による心陰影X織像の拡大が,腫瘍性心膜炎の臨床所見として特別の意味のあった時代は終わり,現在では超音波による検査法の長足の進歩により,心陰影の拡大が全然認められない時期でも心膜液の貯留を無侵襲的に検出することが可能となった.
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