Japanese
English
診療指針
心膜炎
Pericarditis
大鈴 弘文
1
Hirobumi Ohsuzu
1
1東京警察病院内科
1Medical clinic of the Tokyo Meteropolitan Police Hospital
pp.99-105
発行日 1958年2月15日
Published Date 1958/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404200591
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1.心膜炎の頻度,診断困難な1例
心膜炎は日常臨床では比較的稀な疾患である。肋膜炎,腹膜炎等の他の漿液膜炎に較べて,遥かに少い。我々のクリニックで最近2年間の入院患者について調査してみても,心膜炎を主病名とするものは1例もなかつた。昭和29年厚生省統計によれば,心臓疾患による死亡総数55,284中,心嚢炎を病名とするものは僅かに11であつて,心筋,心内膜,冠動脈疾患に較べて格段に少いのである。然し昔から心膜疾患は思つたよりも多いものであると多数の学者が述べている。例えば剖検例の5.8〜6.2%に心膜疾患があるにもかかわらず,その半数以上が生前に診断ができなかつたという報告がある。我々も少数ではあるが,剖検に際して意外な心膜炎を証明し,又は古い心膜炎の痕跡を認めた経験がある。即ち心膜炎はそれ程稀な疾患ではないが,臨床診断のつかないままに,死亡してその一部は剖検で発見され,或は臨床的に治癒して後障碍を残さないものが相当に多いものであろうと思われる。
臨床診断が不可能でも治癒したものはともかく,早期に診断し,適当な治療によつて救い得る筈のものが,然らざるために死亡し,又は後に収縮性心膜炎,甲心の如き遺残症状を呈するものがあることを思えば,我々は心膜炎の診療について,更に慎重でなければならない。
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