今月の主題 血栓とその臨床
血栓好発状態
凝固亢進状態と血栓好発状態
前川 正
1
1群馬大・第3内科
pp.825-828
発行日 1979年6月10日
Published Date 1979/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402215907
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はじめに
血栓の成因には古くVirchowのトリアスがあり,血管壁,血流の変化のほか,血液自体の性状変化が関与すると考えられている.このような指摘が正鵠を得たものであることは,そん後今日に至るまでの間に積み重ねられた臨床的,病理学的,あるいは実験的成績などから疑う余地はほとんどない.かくて,血栓の成因といえば,このトリアスをお題目のごとく唱えれば事足りるという気運を生じたことも事実であるが,近代的凝血学の発展に伴って,血液成分中,血栓の構成分となる諸因子の血栓形成における役割の解明が,研究課題の一つとなった.病的な血管内凝固の結果として成立する血栓の形成機序は,本質的には止血血栓のそれと等しいことが指摘されており,後者の解明に従って、血小板や凝固因子の血栓形成における役割の研究も著しく進展するに至った.
このような背景のもとに,凝固亢進状態hypercoagulability,血栓好発状態prothrombotic stateあるいは前血栓状態prethrombotic stateなどの概念が臨床医学に導入された.以下,これらに関連した問題の若干をとりあげて筆者の見解を述べてみたい.
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