今月の主題 意識障害への新しいアプローチ
治療のポイント
肝性昏睡
安部井 徹
1
1東邦大第2内科
pp.54-55
発行日 1975年1月10日
Published Date 1975/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402205737
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治療に入る前に
当然のことではあるが,肝性昏睡の治療に入る前に,昏睡が本当に肝性昏睡であるかどうかを充分に鑑別しておく必要がある.肝疾患でみられる昏睡は必ずしも肝性昏睡だけではない.とくに低Na血症や急性アルコール中毒,糖尿病性昏睡,低血糖発作,尿毒症などとの区別は注意を要する.また,振せんについては,ウイルソン病との鑑別も大切である.ときには潜在していたうつ病やパラノイアのような精神病が肝疾患の経過中に顕性となることもある.
次に大切なことは,肝性昏睡を惹起せしめた諸種の要因を見出しておくことである.利尿剤,腹水穿刺,下痢,嘔吐,消化管出血,手術,飲酒のほかに,バルビタール,モルフィン,トランキライザーなどの薬剤などはとくに注意を要する.多量の蛋白摂取や便秘も腸管内の有害アミンの吸収を促進して昏睡の要因となる.
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