今月の主題 肝硬変と肝癌
肝硬変の病態と対策
肝性昏睡
渡辺 明治
1
1岡山大学医学部・第1内科
pp.1554-1556
発行日 1987年9月10日
Published Date 1987/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402221083
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診断と臨床病型
肝機能異常,意識障害,肝性口臭,羽ばたき振戦,高アンモニア血症や脳波異常(高振幅徐波と三相波)などを参考にして肝性昏睡と診断することが多く,その重症度は昏睡度分類に従うのが一般的である(表1).肝性昏睡時にみられる精神神経症状はいずれも非特異的なものであり,肝疾患のあることが前もって明らかでない場合には,頭蓋内病変や他の代謝性脳症(糖尿病性昏睡や尿毒症)などとの鑑別が必要となる.
肝硬変例でみられる肝性昏睡には,繰り返し意識障害発作を生じる「慢性(再発)型」と,新たな原因あるいは誘因が加わり,急速に肝不全に陥ったと思われる「急性型」に大別される(表2).前者は,腸管内で産生される有毒物質(アンモニア,メルカプタンやインドールなど)が門脈-大循環系短絡路を経て直接脳に達し,主として異常行動を示す病型であり,肝機能異常が比較的軽度で,経過が長く,治療にも反応し易い.後者は,さらに,代償期にウイルス肝炎(輸血後肝炎も含む)や薬物・アルコール性肝障害が加重したacute-on-chronic,あるいは全身火傷など重症外傷や手術後に生じる肝不全(肝性昏睡),さらに非代償期に消化管出血などを契機に昏睡に陥る末期型(日常しばしば遭遇する.黄疸や腹水を伴う)に細分できる.最近の肝硬変の延命と手術適応の拡大などにより,術後肝不全(外科的肝不全)にみる肝性昏睡例が増加の傾向にある.
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