症例
コメント
内藤 周幸
1
1東大第1内科
pp.1111
発行日 1970年6月10日
Published Date 1970/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402203251
- 有料閲覧
- 文献概要
急性および慢性アルコール中毒のさいに高脂血症がみられることは半世紀以上も前から知られていたが,1958年にZieveが,アルコール性脂肪肝の患者のうちのあるもので黄疸,高脂血症,溶血性貧血を示すものに着目して1つの症候群として発表して以来,今日では世界的に通用する症候群の1つとなっている.私が8年前に本邦における第1例を発表して以来すでに本邦でも10例以上の報告が見られる由で,この方面に対する関心が高まってきた徴候と思われ,よろこばしいしだいである.
今回,三宿病院の上野副院長を中心とする肝臓グループから,8年余にわたって経過を観察したZieve症候群の1例が発表されたが,きわめて興味ぶかく拝見した.というのは,肝硬変症が進展すると高脂血症はみられなくなり,もはやZieve症候群は呈しなくなると考えられているからである.したがって,この症例では,アルコールの多飲にもかかわらず,長期間にわたってZieve症候群がみられたということは,逆に,この間に肝硬変はあまり進展しなかったのではないかと考えさせるが,事実このことを頻回の肝生検によってみごとに実証されているからである.私の知るかぎりでは,Zieve症候群の患者をこれほど長期間経過を追って観察した報告は見られない.この症例はいわゆる"partielle Zieve"に相当するものであるが,上述の意味で非常に貴重な報告例であると思われる.
Copyright © 1970, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.