阪大・阿部内科 研修医のためのWard Conference・6
心疾患と妊娠
阿部 裕
1
,
榊原 博
3
,
松谷 公夫
3
,
倉智 敬一
2
,
竹村 晃
2
,
望月 茂樹
1
,
植村 仁一
3
,
小林 正
1阪大第1内科
2阪大産婦人科
3阪大内科
pp.675-681
発行日 1969年6月10日
Published Date 1969/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402202697
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阿部 心疾患患者を取扱う場合,なんらかの種類の心疾患が存するということと,その患者の心臓の血液ポンプとしての能力,すなわち心機能がいかなる状態にあるかということを,一応概念的に分けて考える必要がある.たとえば臨床上十分な心機能を有しているにもかかわらず,ただ大きい雑音が聞かれるというだけで社会生活を過度に制限したり,妊娠を中絶せしめたりすることは,日常たびたび見られる傾向である.しかしこのような不必要な過度の生活規制は決して望ましいものではなく,つまり,心疾患にあっては常にその心機能を考慮し,いかなる程度の負荷に耐えうるか,心不全状態にあるか否かを判断し,その心機能を可能な限り最良の状態に保持せしめ,その範囲内においてできるだけ社会に適応した生活を送らせるのが心疾患臨床の要請であろう.本日は心疾患患者の妊娠をテーマにして,以上の問題を討論したいと思う.
症例にはいる前に,まず一般論として,妊娠が母体におよぼす血行力学的負荷から考えたい.
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