メディチーナジャーナル 公衆衛生
食習慣,栄養,健康
鈴木 継美
1
1東大公衆衛生
pp.625
発行日 1964年7月10日
Published Date 1964/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402200391
- 有料閲覧
- 文献概要
いささか三題話めいたテーマで恐縮であるが,栄養が健康の増進,疾病の予防,治療において重要な役割を演ずるものであることは誰しも認めるところである。しかし,人は栄養学的にみて合理的な食事をとるとはかぎらない。現実の場において,人は栄養素を摂取することに専心するのではなく,食事をとることになんらかの楽しみを求めているといつたほうがよい。この前の大戦のナチス・ドイツの強制収容所において,もつとも残酷な刑罰の一つとして,1回分の食物を全部一まとめにしてすりつぶしてだんごとして与えるという方法がとられたこともそれを裏書きしている。
慢性病患者の療養指導をやつた人なら誰でも気づくことだが,塩分を減らした食事,動物性脂肪を減らした食事をとりなさいといつても,病状がかるく自覚的に大したことがない場合には,なかなか実行されない。その逆に長年にわたる糖尿病者で糖分を制限された食事になれた人ならば何の苦痛もなくそれを楽しむことができる。
Copyright © 1964, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.