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食習慣と長壽
近藤 正二
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1東北大學衞生學教室
pp.177-180
発行日 1950年3月15日
Published Date 1950/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200608
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長壽とか老衰とかを考える際には(乳幼兒死亡迄も含んだ)平均壽命よりも人口に對する高齡者の率を見る方が正しく且つ簡便である。長命者の多少は地方により著しき差がある。人口に對する滿70歳以上の高齡者の率を縣別に見ると第1表の如く,全國平均2.65%に對し,烏取・島根・高知・徳島の4縣は4%以上であるのに秋田縣は僅かに1,6%に過ぎない。更に個々の村に就て見るならば此の差は一層甚だしい。今女だけに就て見るに,人口に對する70歳以上の率は長命者の多い村では10%もあるのに少い村では僅かに1%内外に過ぎない(全國平均は3.1%)
一般に長命者の多い處では之等老人のみならずそれに續く60歳乃至50歳代の人々の活動力(老後の體力)もさかんであるが,長命者の少い處では之等の人々の活動力が著しく劣る。即ち長命者の多い處では老衰が遅く,長命者の少い處では老衰が早いのである。例えば隱岐の黑木村の如きは,人口3700餘の中に滿80歳以上が82人も居つて,しかも其の大部分が元氣で働いて居るので60-70歳では未だ老人と言えない位であるのに,秋田・山形縣などに多く見られる短命村では大體60歳が既に老衰期とされて居る。したがつて長命村と短命村とでは一生の間の活動期間に大きな差がある。尚其上に短命村では50歳60歳代で半身不隨等で働けない人が相當に多いのが常であつて,之をも考慮に入れるならば兩者の差は一層甚だしいものになる。
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