特集 生活習慣と健康
生活習慣と健康—栄養
上島 弘嗣
1
1滋賀医科大学福祉保健医学講座
pp.856-860
発行日 1994年12月15日
Published Date 1994/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901163
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
◆はじめに
わが国は,1945年の第二次世界大戦における敗戦後,栄養状態の改善とともに結核を代表とする感染症による死亡率を減らし,また,乳児死亡率も減少させた1).そして,1951年には慢性疾患の代表格となった脳卒中がわが国の死亡のトップを占め,脳卒中撲滅が国民の悲願となった.その後,栄養状態の改善とともに,1965〜90年の過去25年間に脳卒中死亡率は80%以上も滅少し,わが国は世界の長寿国の首位を占めるに至った1).この間,多くの先進工業国は,脂肪のとり過ぎによる過栄養の状態から血清総コレステロール値は高値を維持し2),動脈硬化性疾患の心筋梗塞の死亡率は高率であった3).
近年のわが国の食生活は,欧米先進工業国のそれに近づきつつあることが指摘され,動脈硬化性心疾患の増加も懸念されている.ここでは,わが国の食生活の変化に触れつつ,いわゆる成人病である慢性疾患の動向との関連について触れ,今後の食生活のあり方について述べてみたい.
Copyright © 1994, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.