連載 Festina lente
窮屈ということ
佐藤 裕史
1
1慶應義塾大学医学部クリニカルリサーチセンター
pp.333
発行日 2012年2月10日
Published Date 2012/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402105807
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英国に比べれば一目瞭然だが,同じ島国でもろくに平野のないところに大勢が住む日本では,空間的・物理的窮屈さは如何ともし難い.その窮屈さからせめて気分だけでも逃れようとする工夫には昔から事欠かずにきたようである.坪庭,盆栽,濡れ縁,襖に障子に屏風.ただこうした古来の工夫の多くは絶滅寸前で,その結果,空間的窮屈さに加えて心理的窮屈さも逃れ難いものになってきた.
心身への有害性からすれば,心理的窮屈さは結構たちが悪い.言いたいことが言えない,板挟み,心ならずも嘘を強いられる,無理難題を背負い込む,等々.心理的窮屈さをうまくやり過ごせれば,筋緊張性頭痛,高血圧,うつ病,過敏性腸症候群の過半は相当軽快するのではないだろうか.窮屈さをせめて束の間忘れようと暴飲暴食する人はわんさといる(かくいう私も例外とはいえない)が,窮屈でなくなればその必要もなくなるから,胃潰瘍,肝機能障害,肥満,脂質異常症,耐糖能障害なども軽減することは想像に難くない.嫌な言葉だが「メタボリックシンドローム」なるものにしても,心理的窮屈さはその重要な一因の筈である.
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