焦点
―摂食障害の治療における“窮屈さ”“息苦しさ”の源泉をたどる―正解を求めず,問題を発見する
大河原 昌夫
1
1住吉病院
pp.38-45
発行日 2004年5月1日
Published Date 2004/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689100218
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■家族を巡る葛藤
ある摂食障害の人が言っていた。
「友だちと会って食事をするときは,お互いにつまみ食いするのが楽しい。そんなときは食べたあと吐かないですむ。でも家では1人ひとり食べる皿が決まっていて,人のものに箸を出すと怒られた。そして食べたあと吐いてしまう」
この食卓の窮屈さ。家庭は禅寺の修行ではない。1人でひっそりと食べる食事もたまにはいいだろうが,それは大人の楽しみである。子どもはやはり,大勢でわいわい喋りながらの食事を楽しみ,つまみ食いや互いの皿をつつきあうのが侵されざる文化であると思う。食事はお互いを食べ合う場でもある。ところが,ここに述べた家庭では,食事が互いの交流の場ではなく〈隔離〉の場になっている。
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