連載 医事法の扉 内科編・5
届出義務
福永 篤志
1
,
松川 英彦
2
,
稲葉 一人
3
1国家公務員共済組合連合会 立川病院脳神経外科
2国家公務員共済組合連合会 立川病院内科
3中京大学法科大学院
pp.902-903
発行日 2011年5月10日
Published Date 2011/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402105189
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今回は,医師法21条の届出義務について検討します.医師には,食品衛生法に基づく食中毒患者の届出や,いわゆる感染症法に基づく感染症患者の届出などの義務がありますが,医師法上の届出義務は,異状死についてです.医療現場では届け出るべきかどうか悩むケースが意外と多いので,届出範囲をできるだけ明確に決定できるようなツールが求められます.
医師法21条は,「医師は,死体又は妊娠四月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは,二十四時間以内に所轄警察署に届け出なければならない」と定めています.この規定は明治時代から引き継がれており,当初は,伝染病の流行拡大防止,犯罪の早期発見・治安維持が目的だったようですが,前者の目的については,いわゆる感染症法「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」12条に移行され,後者が現時点での届出義務の趣旨と解されています.この点について最高裁は,「届出義務は,警察官が犯罪捜査の端緒→1を得ることを容易にするほか,場合によっては,警察官が緊急に被害の拡大防止措置を講ずるなどして社会防衛を図ることを可能にするという役割をも担った行政手続上の義務と解される.そして,異状死体は,人の死亡を伴う重い犯罪にかかわる可能性があるものであるから,上記のいずれの役割においても本件届出義務の公益上の必要性は高い」と述べています(平成16年4月13日判決;都立広尾病院ヒビテン静注事件).
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